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君が堕ちるまで サンプル

オメガバース再録本書下ろし付(R18) オフセット/A5/100P(表紙含)より少々抜粋

君が堕ちるまで、より
君は小学校で習った保健体育の授業を覚えているだろうか。
他ならぬ自分自身の身体の事なのだから、忘れようがないと言う人が大半だろう。
そして、自分とは違う異性などに興味が出てくる思春期はひたひたと近づいて我らを大人に押し上げていく。

まぁ、それはいいとして。その性別の話だ。

この世には男女の性のほかに、α・β・Ωという種類がある。読み方はアルファ、ベータ、オメガだ。
なに?男女だけじゃなかったのかって?

それは大まかな区分だ。男女それぞれにα・β・Ωがあるから、きっちり分ければ6種類。
そして、それは呼び名と共に、一種の階級のようなレベルを示すものでもある。

αは俗にエリート様とかキング様とかもてはやされたりやっかまれるような頭脳と容姿を持つものが多い、生まれ持っての天才肌タイプらしい。個体数は少ない。
βはごく普通に一般人。普通の男女だ。ただし、αには敵わないことが多いという統計もあるようだ。
そして、最後にΩ。こちらは男女ともに思春期あたりから発情期が3か月に一度あるという特殊な体質を持ち、その発情期がある為に他の階級の人間から時として蔑まれたりオモチャのように扱われたりすることもある。ある意味差別されていると言えるだろう。こちらも個体数は多くは無い。
発情期が来るとΩはαを呼ぶように甘い匂いを出す。抑制剤と呼ばれる薬で抑えれば匂いは収まるが、発情期の匂いを抑えて無い場合、フリーのαが寄って来てしまい、Ωは基本的にαに逆らえないから不本意ながら本能に負けて望まない相手に身体を許さざるを得なくなったりすることもある。
匂いを押える方法として一番いいのは、αにうなじを噛んでもらうことだ。この行為を番と言う。一度、番になってしまえば、他のαを引き寄せるような匂いは出さなくなる。

しかし、この番というものは、時にαとΩの人生を狂わせるのだ。

大嫌いな相手が番であったり、既婚者が番を見つけたばかりに離婚して家庭が崩壊したり、匂いに引き寄せられただけのαが強引にΩの望まない番契約をしてしまったりと、いろいろややこしいことになるので、Ωは大抵自分の身体の事を知った時から個体数の多いβに擬態するべく努力するものが多い。
昨今では抑制剤もなかなか性能が良くなって来ていて、発情期以外ではおいそれとΩと分からない子もたまにいるくらいだ。

まぁ、長々と既にどこかで聞いた話をしてもアレだ。本題に移ろう。

俺、火村英生は生まれ持った男性のαだ。英都大学で社会学部の准教授の職に就いている。犯罪を調べるために、近隣の警察関係者に頼み込んで殺人現場を見せてもらい犯人を特定するフィールドワークで犯罪を暴くのを生きがいにしている。
そして、そんな俺の助手は、推理小説作家の有栖川有栖という同い年の男だ。大学からの友人で、彼の著書には現実の事件は書かないものの、何かの参考になればと助手としてフィールドワークに参加してくれている。
彼は、生まれ持った性は男性のβだった。そのはずだった。

なのに。

なぜ、βのはずのアリスから甘い匂いがするんだ?







びしょ濡れキッチンラバーズ(アリス視点) ※書き下ろし

「はよ帰ってこい、と……これでよし」
 ゴムは買った。食料もある。そして、身体は既にヒートに突入しかかってムラムラしている。オメガの私がこうなのだから、アルファで私の番の火村もムラムラしてそうな気はするが、職場から私のマンションに来るまでにイライラしながらおんぼろベンツを運転して事故らないことを祈ろう。
 そう、私と火村は番で、結婚の手続きはまだだが、ちゃんとした恋人同士だ。火村の方はいつでも結婚すると言ってくれているが、私は数ヶ月前までベータだった隠れオメガなものだから、まだどうにも心の準備が出来てなくて、両親にどう説明したものやらと悩んで無駄に日々が過ぎてしまっている。
「まぁ、もうちょっとくらい、恋人を満喫したいなーっちゅうか」
 つまりは単に私のわがままだが、火村とは親友の期間のほうが断然長くて、恋人になってまだ一ヶ月くらいなのだ。もう数ヶ月位は甘い甘い恋人時間を過ごしてから結婚したいなーというやつである。番状態の恋人と、新婚状態とを比較したところで大して変わらないと言われたら反論できない上に、結果的には私の甘すぎた計画は後日もろくも崩れ去ることになるのだが、その時はそんな甘い夢を見ていた。
 話を戻そう。
 私は正式な番になって二回目のヒートの兆候を迎えて、自分でも分かるくらいに浮かれている。原稿は昨日徹夜で完成させて片桐に送り、ヒート突入連絡もしておいたので心置きなくヒートを満喫できるというものだ。いそいそと食料を確保し、避妊具その他の用意をして火村に連絡を入れ、お風呂に入ってきれいに体を洗い、ベッドに火村の匂いの付いた衣服を持ち込み、彼の帰りを今か今かと待っているところ。
「ただいま!」
「おかえりーぃ! 待っとったで、だーりん!」
 やっほぅ! これで気兼ねなくいちゃいちゃできるぞー! と出迎えると、靴を脱ぎしなの火村がぎゅーっと抱きついてくる。おお、熱烈やな!
「アリス」
「ふふっ」
 ひー! 帰って早々に玄関でちゅーとか、新婚さんやーん! えへへへへ。にまにまと笑み崩れてちゅっちゅっとキスを受けていたら、何やら下半身がぞわぞわして条件反射で部屋着のハーフパンツの上から股間を押さえる。
「っん、まっ、待って、……っ、といれっ」
 おかしい。トイレはさっき済ませているのに、急になんやそわそわするっ! とりあえず大の大人が玄関先でお漏らしは恥ずかしいので、申告してから抱擁を離してもらいトイレに駆け込む。
「ふー……んん?」
 漏らさずに駆け込めたと思ったのに、さっき出そうだった尿意はすっかり引っ込んでしまって一滴も出ない。なにか焦ってるのかと思って、深呼吸してリラックスしてみても出ないものは出ない。
「……さっき済ませたからやろか?」
 お風呂の前にちゃんとトイレは済ませたのだ。急な尿意は勘違いだったのかも知れない、と首を傾げながらもトイレを出て洗面所で手を洗い、火村が待つ居間に出向き――。
「ふあぁぁぁっ!? 漏れるぅ!」
 ううっなんでだ。またおしっこ出そう! 慌ててぎゅうっと股間を手て抑えて、きゅっとお尻に力を入れて、はふはふと息をつく。落ち着けアリス。さっきトイレ行っても一滴も出なかったじゃないか!
「何やってんだ。トイレ行ったんだろ?」
 スーツから部屋着のスウェットに着替えたばかりらしい火村が戸口で固まる私を見て不思議そうな顔をするが、私だって何がどうなってるやら訳がわからない。




<R部分の一部抜粋>
「っん、ああ、ン、はぁ、な、なぁ、ひむらぁ」
「どうした?」
「もっとこつこつしてぇ」
「んー? 我慢できないアリスちゃんは自分から腰振ってるみたいだけどな?」
「せ、やけどぉ……はぁ、なんや今日変やわ……足りひん」
「もっとガツガツしていいのか?」
 最初から飛ばし過ぎたら泣くくせに、と火村が後ろで苦笑している。悪かったなややこしいやつで! だって、火村の本気は相当に凄いのだ。本気で抱かれて気を失ったことが前回のヒートのときだけでも片手じゃ足りない。

この先は、本編でお楽しみ下さい。
再録集の方は書き下ろしがあまり多くないのでサンプル短くてすみません。
目次はこんな感じ
一、君が堕ちるまで(再録)
ニ、君が堕ちた言葉は(再録)
三、くるみぽ○ちお(再録)
四、君と創る愛の巣は(アリス視点/火村視点)(再録)
五、びしょ濡れキッチンラバーズ(書き下ろし)
六、君に永遠を誓う日(再録)
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